国際協力型がん臨床指導者養成拠点 高度実践看護学(がん看護)コースにおけるこれまでの取り組みと成果
高度実践看護学コースの目標の達成に向けた取り組み

Ⅰ.最新のがん医療と専門看護師教育38単位科目に対応したICT教育の充実による“知識の深化”

1. がんプロ全国e-learningクラウドにおける専門看護師教育38単位科目に対応した教育システム構築

高度実践看護学コースでは、全国看護系大学協議会の協力を得て、がん看護専門看護師教育課程(38単位)の養成を支援するe-learning教材を開発し、がんプロ全国e-learningクラウドがん看護ジュークボックスにがん看護専門看護師教育課程での利用を目的とした10科目112講義の収録を進めるとともに、全国の大学に向けて収録の促進活動を行いました。

2. 大学院専門看護師教育課程科目へのe-learning導入

高度実践看護学コースでは、大学院専門看護師教育課程科目にがんプロ全国e-learningクラウドを各大学の状況に応じて導入しています。筑波大学では、6科目をe-learning授業50・対面授業50のブレインデッド・ラーニングで実施、群馬大学では3P科目、千葉大学では実習の事前学習課題に取り入れるなど、各大学の専門看護師教育にe-learningを活用しています。

3. がんプロ全国e-learningクラウドの活用普及にむけた専門看護師教育関係者との交流集会

全国の専門看護師教育課程におけるがんプロ全国e-learningクラウドの活用普及にむけて、専門看護師教育に携わる大学関係者および大学院生との情報交換を目的とした交流集会を平成24年~26年度に3回開催しました。平成27年度現在、がん看護専門看護師教育課程のある全国71の大学うち、49大学において、がんプロ全国e-learningクラウドが導入されています。

交流集会の概要

平成26年度開催
「専門看護師育成におけるICT教育:“がんプロ全国e-learningクラウド”の活用」

日 時:平成27年2月28日(土)10:00~11:00
場 所:パシフィコ横浜 会議センター第9会場
参加者:20名

 

<プログラム内容>

【座長】

 二渡玉江(群馬大学大学院保健学研究科)
 増島麻里子(千葉大学大学院看護学研究科)

 

【情報提供】

  1. 専門看護師教育課程(38単位化)における大学院教育の現状と課題 
    眞嶋朋子(千葉大学大学院看護学研究科)
  2. “がんプロ全国e-learningクラウド”の概要と専門看護師教育における
    ブレインデッドラーニングの有効性について
    笹原朋代(筑波大学医学医療系保健医療学域)
  3. 専門看護師教育課程における“がんプロ全国e-learningクラウド”の活用の実際
    • 1) CNS(がん看護)教育課程でのe-learning-筑波大学の活用例
      水野道代(筑波大学医学医療系保健医療学域)
    • 2) 共通コア科目Bにおける活用-群馬大学の活用例
      神田清子(群馬大学大学院保健学研究科)
    • 3) 実習前の自己学習教材としての活用-千葉大学の活用例
      長坂育代(千葉大学大学院看護学研究科)

 

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【情報提供内容例】

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【参加者の感想】

全国の大学だと、教員が少ない中で教育しているところもあるので、e-learningで多種多様な講義が提供されるのは学生にとっても有益だと思います。

 

社会人学生が多いCNSコースのため、38単位教育課程認定に向け、e-learningは、学生の負担軽減に有用だと思います。

 

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4. がんプロ全国e-learningクラウドを活用している大学院生対象のICT教育に対する満足度調査

高度実践看護学コースにおいて、がんプロ全国e-learningクラウドを用いた授業を受講している大学院生に、平成26年7~8月にかけて、ICT教育に関連する満足度調査を実施しました。

結果の概要

  • 1) 3大学(筑波大学、千葉大学、群馬大学)から各8名、計24名の学生から回答を得た。このうち半数が働きながら修学しており、また半数はがん看護以外の専門看護師の資格取得を目指していた。
  • 2) 8割の学生が、さまざまな講義を聴講できるプログラムジュークボックス方式のメリットを活かして、複数の収録講義を視聴していた。7割近くの学生は、1つの収録講義を複数回にわたって視聴すると回答し、また聴講する場所を自宅と回答していた。
  • 3) 全体的にe-learningの授業に対するイメージは好意的なもので、全員の学生がe-learningを自分の学習に役立つかほぼ役立つと回答した。
  • 4) e-learning授業と対面式講義・演習を組み合わせた授業科目に対して、否定的な回答は認められなかったが、e-learning授業に対面式講義・演習を組み合わせることが、学習効果をあげることに寄与するという結果は、必ずしも得られたとはいえなかった。

Ⅱ.卓越した実践力を備えた専門看護師による実習指導と看護学教員のフォローアップによる“実践力の向上”

1. 専門看護師実習指導の充実化

専門看護師実習では、がん診療連携拠点病院等の協力を得て、がん看護専門看護師と看護学教員が連携し、高度な看護実践力を身に付けるための教育の充実化を図っています。

2. 専門看護師資格取得支援の実施

高度実践看護学コースでは、在学中から修了後に渡り、専門看護師資格取得のためのケースレポート添削等のサポートを行っています。

3. 専門看護師資格取得者のための継続教育プログラムの開催

専門看護師資格取得者に対して各大学が継続教育を行っています。例えば、千葉大学では、専門看護師資格取得者のためのワークショップや、さらなるスキルアップをめざす人のための専門看護師強化コースがあります。

Ⅲ.高度実践看護における国際交流や大学間交流、および地域住民との関わりを通した学びあいによる“視野の広がり”

1. 大学院生参加型国際交流ワークショップ

高度実践看護学コースでは、がん看護における国際交流および大学の枠を超えて、大学院生間の交流を図るとともに、大学院生の国際的な視野を広げることを目的とした大学院生参加型国際交流ワークショップを開催しています。

ワークショップの概要

平成26年度開催 大学院生参加型国際交流ワークショップ
「アジアにおけるがん看護の展望~これからのがん看護を変える若い力」

日 時:平成27年1月31日(土) 13:30~16:30
場 所:筑波大学東京キャンパス
参加者:26名(大学院生17名、教員6名、看護師1名、その他2名)

 

<発表者>
  • 「台湾におけるがん看護教育の現状と課題」
    Yujuan Xu, RN, MS, Nurse Practitioner
    (Ph.D. student, Department of Nursing, College of Medicine, National Taiwan University)
  • 「インドネシアにおけるがん看護教育の現状と課題」
    Ummi Pratiwi Rimayanti, RN
    (Master student, Graduate School of Comprehensive Human Sciences, University of Tsukuba)
  • 「日本におけるがん看護教育の現状と課題」
    Hitomi Sato, RN, MSN
    (Ph.D. student, Graduate School of Nursing, Chiba University)

 

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[ワークショップ参加者の声]
筑波大学大学院人間総合科学研究科看護科学専攻博士前期課程2年 Ummi Pratiwi Rimayanti さん

「Oncology Nursing in Indonesia」
Cancer burden are increasing in Indonesia with breast cancer hold up the highest prevalence. Oncology nurses engage in caring and therapeutic relationships with cancer patients and their families using an approach that is sensitive to language and culture. Nursing interventions which maintain physical comfort and related to informational support appear to be considered essential by cancer patients and families. Additional training in cancer care is required to support undergraduate education that only offer basic and general knowledge about cancer. The availability of palliative and hospice care for cancer continues to be the challenge on the account of wide geographic area. Being involved in the Asian Oncology Nursing International Student Workshop brings the new insight for the importance and value of providing cancer care not as care at the end of life, but as improving patient’s quality of life.

 

千葉大学大学院看護学研究科博士後期課程2年 Aさん

 ワークショップに参加して、各国の看護教育や看護師制度、がん看護についての現状を知り、アジアのがん看護について学びを深める機会になりました。特に印象に残る学びは、文化的背景により人々の死や健康、治療に対する価値観が異なってくるということです。知識として理解していても自国だけの看護経験では文化的背景を感じることが少なく、今回改めて学ぶことができました。また、看護実践だけでなく現在取り組んでいる研究活動についても発表があり、非常に刺激を受けました。同じ大学院生という立場だからこそ、遠慮することなく、質問し、議論するという交流ができたと思います。海外の大学、特にアジアの大学との交流は、学会や現地に行かない限り難しいと思っていました。しかし、今回のワークショップのように、海外からの留学生と大学院生の交流は、身近で他国の看護を学ぶことができ、自国の看護への気づきも得る貴重な機会になりました。

 

 

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平成27年度開催 大学院生参加型国際交流ワークショップ
「英国における緩和ケアを学び、日本のがん看護・緩和ケア教育を考える」

日 時:平成27年6月21日(日)10:00~12:00
場 所:筑波大学東京キャンパス
参加者:30名(教員10名、大学院生17名、看護師1名、学部生2名)

 

講演者:Professor Sheila Payne, RN, PhD (Lancaster University)
指定質問者:若杉 歩 (千葉大学大学院 看護学研究科 博士後期課程)
      安田弘子 (群馬大学大学院 保健学研究科 博士前期課程)
      秦 千晴 (筑波大学大学院 人間総合科学研究科 博士前期課程)

 

[ワークショップ参加者の声]
千葉大学大学院看護学研究科博士後期課程1年 若杉 歩さん

 私は指定質問者として、本ワークショップに参加させて頂きました。ご講演下さったSheila Payne教授は、European Association for Palliative Care:EAPCのプレジデントであるため、ご講演の中では、ヨーロッパ全体として緩和ケアを向上させる教育的な取り組みについてお聞きすることができました。現在、「国際協力型がん臨床指導者養成拠点」としてグローバルに活動できる医療人材育成が日本でも求められています。そこで、同じアジア圏であっても文化的背景が大きく異なる中で、どのように国際的に緩和ケアを向上する取り組みが推進できるのか質問させて頂き、互いの文化的、経済的背景の違いを理解し、互いの強みを活かし合う方向性で取り組みを考える重要性をご示唆くださいました。違いを理解し認め合う中で、成果の高い取り組みを産み出していきたいと感じました。

 

群馬大学大学院保健学研究科前期博士課程2年 安田 弘子さん

 ヨーロッパ各国が協力し合い、緩和ケア看護教育の水準の向上に努めていることを学び、多国が協力することのメリットを知りました。日本の緩和ケア看護教育の水準の向上にはアジア諸国の協力が必要であり、またアジア諸国が協力し合うことが、アジア全体における緩和ケア看護教育の水準の向上につながるということを改めて考えさせられました。
 また、英国では大学院における研究指導を、インターネットを利用したテレビ電話のような対面方式で実施しており、学習意欲があり、時間確保が困難な社会人には効果的な方法であると感じました。日本の大学もこのような指導方法を取り入れることで、仕事と両立しながら学業に励む人材の確保に寄与できるのではないかと思います。

 

筑波大学大学院人間総合科学研究科看護科学専攻博士前期課程2年 秦 千晴さん

 がんプロフェッショナル養成基盤推進プラン 大学院生参加型国際交流ワークショップに参加し、イギリスの緩和ケア看護教育について学ばせていただきました。学生として生活していると、海外の看護について学ぶ機会はなかなか持てないのが現状です。このような機会にイギリスの看護について触れられたことは、大変貴重であり、有意義であったと感じています。特に、日本の緩和ケア看護教育は、ELNEC-Jなどが広がりつつありますが、現場教育が主流であり、まだまだ発展途上であると感じています。ヨーロッパ全体で緩和ケア向上に向けた取り組みがされていることは、私にとってとても興味深い内容でした。
 ワークショップに参加した学生には、私も含めてCNSコースに所属する方もいらっしゃいました。今回、他大学の大学院生と交流を持てたことで、多くの方々と繋がるきっかけとなりました。いつか皆さまと日本だけでなく世界的な活動ができるよう、研鑽を重ねたいと思います。

2. アジアの高度実践看護学に関する教育実態調査の実施

看護系e-learning教材を国際的にも活用できるものに発展させるために、各国のe-learningによる教育ニーズを探る質問紙調査を中国、韓国、台湾、インドネシア、ベトナムのがん看護学を専門とする看護系大学教員に行い、アジア諸国の看護系大学院の現状や事情を把握しました。

3. アジアとの緩和ケア教育に関する国際共同研究の実施

アジアという同じ文化圏に属しながら、宗教や習慣、国民性、経済成長等の異なる国の間で、緩和ケア教育という一つのテーマについて国際比較をすることで、アジアにおける緩和ケア教育に関するコアコンピテンシーについて共通理解を得るために、台湾、タイ、日本の3ヵ国の間で国際共同研究を行います。
緩和ケア教育に関する学生の現状を、知識、倫理的志向、教育ニーズの3側面より把握した上で、その現状をアジアの3国の文化的・教育的背景を踏まえて比較検討します。日本では、高度実践看護学コースにおいて、専門看護師教育を提供している3大学(筑波大学、千葉大学、群馬大学)が、H28年に調査を実施し、教育や実践におけるレディネスの違いによる特徴も確認します。

4. 国内外の高度実践看護師等による招聘講演の開催

各大学が、国内外における卓越した実践能力を備えた高度実践看護師や医療者による講演やケースセミナーを開催しています。これらは、高度実践看護学コースの大学間で情報共有しており、学生は他大学の講演にも参加できます。

5. 市民講座・リレーフォーライフ等への参加による市民との交流

がんに関連した市民公開型の講演を開催しています。特に、群馬大学では、地域の医療機関と連携しスキルアップセミナー(リラクゼーション技法の習得)とリレーフォーライフ活動の運営・参加を行い、市民やがん体験者との交流を深めました。

Ⅳ.多職種参加型ケースカンファレンスを通した専門職間の相互理解による“連携力の強化”

1. 地域の緩和ケアに携わる医療職者を対象とした教育活動におけるがん緩和ケア多職種養成コースとの連携

地域の緩和ケアに携わる医療職者を対象に、緩和ケアにおいてチームアプローチを推進する人材を育成することを目的としたインテンシブコースを毎年開催しています。

2. 職種・領域・施設横断合同カンファレンス等の参加による臨床腫瘍学指導者コースとの連携

国際協力型がん臨床指導者養成拠点の臨床腫瘍学指導者コースが主催する職種・領域・施設横断合同カンファレンスに本コースの大学院生も参加しています。