国際協力型がん臨床指導者養成拠点 高度実践看護学(がん看護)コースにおけるこれまでの取り組みと成果
高度実践看護学(がん看護)コース修了生の声

1.「がん看護専門看護師の役割を理解し、医療チームの一員として協働する」

藤原 梨華さん  千葉大学医学部附属病院看護部

  • 平成25年9月
  • 千葉大学大学院看護学研究科修了
  • 平成26年12月
  • がん看護専門看護師資格取得

 私は大学病院の外科病棟で看護スタッフを経験した後、緩和ケア科混合病棟の副看護師長に昇任しました。患者ケアや多職種との連携において多くの困難な出来事があり、院内のコンサルテーションを通じて出会った専門看護師の方々のような知識や実践能力、問題解決能力を身につけ、自分を成長させたいという思いで大学院に進学しました。

 

 大学院では高度実践看護学(がん看護)コースを専攻しました。実習では、①学内での事例分析演習、②がん看護専門看護師の役割実習、③病院での看護実践実習があります。③は、通院治療室でがん化学療法を受ける患者や自分の関心分野での複雑な問題をもつ患者に対して看護実践を行います。①で系統的アセスメントが行えるように思考過程を学び、②で看護実践能力をどのような立場で、どのような人達と活用していけるのかというがん看護専門看護師の役割を知りました。さらに、③で看護上の問題に対して、根拠を説明し先を見通して意図して介入できるよう、その根拠が客観的で多角的であるよう、専門看護師によるタイムリーな実習指導を受けました。また、看護学教員と実習体験の振り返りを行うフォローアップを受け、実習での学びを意味づけし確かなものにできました。実習や研究の合間の時間にe-learningを活用し、様々ながん種の最新のがん医療の知識、がん看護に関連した看護理論を学び、がん看護専門看護師として身につけるべき知識を理解しました。最新のがん医療・看護の知識については、専門分野の学会や研究会・情報交換会に参加し、常に更新していく必要があることも分かりました。緩和ケアチームカンファレンスの見学実習・薬剤師の役割の講義などにより、専門職の役割について理解し、チーム医療において各医療専門職は目標を共有し、それぞれの役割を発揮し、情報を共有していることが分かりました。

 

 大学院での明確な教育方針と目標達成を経て、修了後1年目で専門看護師の資格認定を受けました。現在は消化器外科病棟で、外科的治療・がん薬物療法・対症療法を受ける患者・家族への入院中の看護を実践し、外来・地域との連携を強化することに取り組んでいます。困難な出来事は多くありますが、看護学の視点から対象者をアセスメントし、チーム医療の一員として協働していくことが私の役割です。

 

2.「がん看護専門看護師までの歩みと今」

柏 彩織さん  茨城県立中央病院・茨城県地域がんセンター

  • 平成26年3月
  • 筑波大学大学院修了
  • 平成26年12月
  • がん看護専門看護師資格取得

 私はALSの患者との出会いをきっかけに看護について深く考えるようになりました。その患者は、呼吸器を装着し、苦痛が強く、毎日天井を見て泣いていましたが、患者のニーズを捉えながらケアする過程で、患者に笑顔が戻り、希望を話されるようになりました。その経験から、ケア提供者である自分にも充実感や成長が得られるというケアリングの重要性を実感しました。そこで臨床において、自分の言葉で看護の価値を他者に理論的に伝えられるようになりたいと思い大学院に入学しました。

 

 大学院に入学して、教育論や倫理、研究、コンサルテーションなど学びました。そして、専門看護師として高度看護実践を行うために、様々な理論を学び、実際に事例を通してアセスメント、看護計画の立案をして、指導を頂き、多角的な視点から看護を考えアセスメントする能力や問題解決能力を養いました。実践実習では、複雑で対応困難ながん患者と家族における現状の問題と今後予測される問題を導くために、データに基づいて問題事象を特定し、包括的、全人的アセスメント、援助計画の立案、看護介入・評価を行いました。今まで、座学で学んだストレスコーピングや危機理論・自己概念などの理論を使って患者をアセスメントしていくと、現状に起きていることが整理され、ケアを組み立てることが出来ました。そこには、今までに味わったことのない看護の楽しみがありました。また、専門看護師の役割である相談や調整においても、組織を客観的に捉え、何が問題でその問題を解決するためにはどこにどのようにアプローチすると解決するのか考えて行動し、医療スタッフと一緒に考え、問題解決に導いて行きました。

 

 2014年に専門看護師となり、現在がん病棟で、苦痛や不安が強い患者の看護実践を通し、ロールモデルとしての役割を果たしています。患者・家族の表出している問題の全体を捉え、患者・家族にとって望ましい結果を導き出し、かつその事象に関わる看護師だけでなく、医師、メディカルスタッフの満足感が得られるよう心がけています。また、経験したことのない事例に取り組む際には、ガイドラインや研究成果を用いて、看護実践やスタッフの教育に応用しています。自らも看護研究に取り組み、看護を理論的にまとめ、根拠のあるデータを残す努力をしています。

 

 今後は、患者を取り巻く状況をさらに俯瞰的な視点で捉えて実践を深め、それを教育して看護の向上に努めて行きたいと思います。

 

3.「高度実践看護学コースでの学びと今度の抱負」

野村 亜矢さん  獨協医科大学病院

  • 平成27年3月
  • 群馬大学大学院修了
  • 平成27年12月
  • がん看護専門看護師資格取得

 私が大学院を目指した動機は、病棟勤務の中で、問題を抱える終末期がん患者の療養場所の決定の際に、がん看護専門看護師の介入により患者が望む療養場所の決定ができ、迅速な退院支援が行えた事を目の当たりにしたことに始まる。この時の専門看護師の姿に感銘を受けたことや他職種連携が円滑にいくための自己の役割不足を痛感した。また、日々がん患者と接する中で、一人一人のがん患者にとって身近な存在で、彼らの思いに寄り添った看護をしたいという思いが強くなり、がん看護専門看護師を目指すようになった。高度化・専門分化が進む医療現場において、質の高い看護ケアを提供するには、より高度な知識、技術が求められる。また、他職種連携が重要とされる中で、医師とディスカッションできる知識に加え、幅広い視点を持って連携を図る能力が求められることから、ケアとキュアの融合を目指す高度実践専門看護師教育課程を選択し、群馬大学大学院に入学した。

 

 大学院では、まずキュアに関する知識を深めた。特に38単位の必須項目である病態生理学、フィジカルアセスメント、臨床薬理学については、講義に加えてe-learning学習により、これまでの知識よりもさらに根底にある事象を追及し、各領域の病態、治療・療養過程の全般を管理・実践するための知識や技術、事例検討を交えて臨床判断を行うための視点やその過程を身に付けることができた。

 

 実習では、6つの役割について実践事例を通し、思考過程を学んだ。専門看護師とは何か、どのような思考過程を踏み、なぜ専門看護師の介入が必要か、自分が行動する意図は何かを常に探究する実習であった。また、介入実習では臨床判断のプロセスとその臨床判断を元にケアに生かすためのアセスメント力を深める事ができた。自分の考えを整理し言語化する事が非常に難しく、つまづき、戸惑う事が多かった実習だったが、教員・実習指導者からの的確な指導や何度もディスカッションを通じて、自分の考えを整理して行くことができ、自信につながる学びであった。

 

 この学びを経て、臨床に戻った今、患者はどんな問題を抱え、どの状況下にあるのかを考え、全人的苦痛の視点で患者の全体像をアセスメントすることを意識するようになった。また、常に自分の行動する意図を考えるように心がけている。しかし、病棟に潜在している問題の明確化や、それに対する介入ができていない。そのため、今後は病棟スタッフの一員の中で専門看護師の役割を発揮し、病棟内の問題を一つ一つ解決しながら、病棟の看護の質の向上に貢献したいと考えている。また入院中のがん患者の、治療の様々な場面での意思決定に関して、お任せや家族や医師の意見に偏り、患者自身の思いが置き去りになっている現状が少なからず存在している。どのような場面においても、まずはがんと向き合う患者自身の意思を明確にし、患者が納得して治療や療養生活を送れるような、意思決定支援への介入に携わっていきたいと考える。

 

4.「高度実践看護学コースでの学びを実践に活かす」

小林 成光さん  研究開発法人 国立がん研究センター東病院 緩和ケア病棟

  • 平成26年3月
  • 千葉大学大学院看護学研究科修了
  • 平成27年12月
  • がん看護専門看護師資格取得

 私が大学院への進学を決めた動機は、今まで培ってきた看護師としての実践を振り返り、専門性を高め、看護師として成長したいと考えたためである。

 

 大学院での学びを振り返ると、各々の講義では、そのほとんどが基礎から学び、学問に対する理解を深めていく内容であったように思う。基礎学問を学ぶことで、知識だけではない学びの深さを感じ、看護学に対する考え方や、今後の自己の看護実践における知識の基盤を学ぶことができたと感じている。特に、実習での看護実践では、専門看護師の指導の下で、大学院での学びを患者に還元する集大成の場であり、知識と実践を結びつける重要な過程であった。e-learningや看護倫理、看護理論などの知識体系を駆使し、患者の置かれている状況を俯瞰的視点で捉えアセスメントし、患者の思いを尊重するための看護実践を通じて学びを深めることができた。また、初めて関わる組織を理解することから始まり、病棟看護師のレディネスや役割を把握し、誰にどのように関わるか、どの資源が活用できるかなどを考え、広い視野で物事を捉えることや多職種と協働することの重要性も学ぶことができた。このように、専門看護師に求められる在り方や、実践・相談・調整・倫理調整・教育・研究の6つの役割を、講義や看護実践を通して包括的に学びを深めていけたように思う。

 

 大学院修了後は、今まで以上に広い視野で物事を捉えることができ、多職種と協働しながら看護実践ができていると実感することができた。一方で、臨床では常に切れ目なく看護実践が求められるため、自己の実践を振り返る機会を十分に持てないと感じていた。そのような中、専門看護師の資格取得に向けた事例作成の過程において、臨床での自己の実践を大学院の先生方と振り返りながら言語化、文章化の作業を繰り返す過程で、自分では気が付かない視点に気づくことができ、専門看護師の役割を再確認するための重要な機会になったと感じている。

 

 現在は、がん患者に対し看護実践・調整・倫理調整の役割を実践しながら、病棟の教育担当として、病棟看護師への教育や、専門看護師や認定看護師の実習指導、執筆活動、院内講師等を通じて教育的役割を実践し、病棟スタッフや病院組織、院外からの依頼を受けながら相談の役割を実践している。加えて、病棟や組織における問題点を捉え、より良い看護実践を追求するために、研究活動や学会発表にて新たな知見の普及啓発に努めている。今後は、自己の実践への内省を繰り返す中で実践力を高めていくとともに、常に最新の知見に関心を寄せ、病棟のみならず、病院全体の看護の発展に寄与できるよう努力していきたい。

 

5.「ケアとキュアの統合―がんになっても笑顔で生きられる地域社会をめざして」

池田 ゆきみさん  日本私立学校振興・共済事業団 東京臨海病院

  • 平成27年3月
  • 千葉大学大学院看護学研究科修了
  • 平成27年12月
  • がん看護専門看護師資格取得

 「より多くのがん患者の生活を良くするために、臨床のがん看護の質を組織的に高めていきたい」これが、私の大学院(高度実践看護学(がん看護)コース)進学のきっかけです。看護師として外科・緩和ケア病棟に勤務し、がんの診断、治療そして終末期までの過程に関わる中で、患者の療養生活が看護ケアによって良くなることを多く経験したからです。

 

 千葉大学は高度実践看護学(がん看護)コースの科目に、がんプロフェッショナル養成基盤推進プランのeラーニングが導入されています。私は必修科目の臨床腫瘍学概論と選択科目の緩和医療学を受講しました。がんの診断・治療を体系的に学習したことにより、患者の治療・疾病過程を踏まえて全体像を把握し、将来の問題を予測した看護介入を検討する力がついたように思います。また医学の視点を得たことは、臨床で意見が対立しやすかった医師の立場を理解することにもつながりました。さらに、がんプロ主催の多職種参加型ケースカンファレンスにも参加しました。臨床の医師や薬剤師などに混じってのディスカッションは、チーム医療における看護師の専門性を自らに問いただし、その役割を明確にする機会になりました。これらの学びは、実際の治療や療養選択の場面で特に生かされていると実感します。以前は、目前の患者の状況に捕われてしまうこともありましたが、現在は、医学的な情報から患者の全体像を把握したうえで問題状況を見極め、意思決定に必要な病状理解の補足や治療や療養に関する情報を生活視点で提供できるようになったからです。

 

 大学院終了後、私は都内の総合病院に勤務しながら、千葉大学において更に一年間の専門看護師強化コースに在学し、その後、がん看護専門看護師の資格を取得しました。私の現在の課題は、自己の実践を言語化し他者にわかるように表現する力を強化することです。組織的にがん看護の質を高めてゆくためには、看護管理者や同僚、時には他職種と交渉し、説得して協力を得ていく必要があるからです。強化コースでは大学教員や現役で活躍されている専門看護師の先輩方の支援を受けながら、自己の実践を振り返り、専門看護師としての貢献のプロセスを明確化して記述する訓練を受けられます。また在学生はがんプロのeラーニングを受講できたため、臨床の疑問をタイムリーに解決できたのも有用でした。

 

 最後に、私のビジョンは職種や専門領域を超えたがん患者サポートネットワークを構築し、診断時から遺族ケアまで切れ目のない緩和ケアによりがん患者とその家族の苦痛を予防し、誰もが笑顔で生きられる地域社会を創造することです。大きなビジョンですが、大学院での学びを糧に、実現に向けて頑張ります。